健康で自立した生活を送るためには、身体機能の維持に加え、食事を安全に、そして楽しめることが重要です。しかし、加齢や疾患により嚥下障害を生じる方は少なくなく、誤嚥性肺炎のリスクや生活の質の低下といった深刻な課題につながっています。
嚥下障害への専門的支援を担う言語聴覚士は、評価や訓練において欠かせない存在ですが、臨床現場では人材不足が大きな問題となっており、病院、在宅医療、介護施設などにおいて十分な支援が行き届かないケースも少なくありません。
本講演では、こうした現場の課題を出発点として、リハビリテーション医療と工学が連携し、言語聴覚士の専門性を補完・拡張することを目指した嚥下支援システムの開発について紹介します。最新の生成AI技術の動向なども踏まえながら、臨床ニーズが工学的課題へと翻訳され、技術として形になっていく一例を示し、医療現場の課題が新たな技術開発の出発点となり得ること、そして医工連携が「食べる」を支える新たな可能性について共有したいと考えています。

酒井 朋子 准教授(総合研究院病院基盤診療部門リハビリテーション部)

船越 孝太郎 准教授(総合研究院未来産業技術研究所)